「神曲」エピソード1

055.gif「二人の酔っぱらい」エピソード1 「洞窟での出来事」野良猫との再会 「覚永和尚」 「みどりと信夫の大当たり」 「仙人候補生」と姉弟 「二人の酔っぱらい」1-2 「神曲」第一部 1-56 「神曲」第二部 57-78 「亜衣姫と羅夢王」1-7


 a0144027_13574841.jpgセムと玉姫は十六歳になっていた。
 そこでセムは関行男 元大尉である父と、母であるロクサーヌに日本に行きたいと告げた。
 玉姫も「セムちゃんと一緒に地球に行きたい」と、中野盤雄 元一飛曹と母であるリーズに言った。
 「地球にか、地球のどこに」と盤雄は聞いた。
 玉姫は「セムちゃんと一緒に日本に行きたい」と答えた。
 「日本か」
 久々に聞く懐かしい響きだ。中野盤雄元一飛曹は神風特別攻撃隊で、関行男大尉を隊長に敵空母に体当たり攻撃をした生々しい記憶が蘇ってきた。
 「あれから日本はどうなっているのだろうか」
 M61の母船に救い上げられ、魂魄と肉体を修復させてもらい、今はオリオン座のMC95と言うクローンの星にいる。中野盤雄元一飛曹も日本の行末を知りたいと思った。
 中野盤雄元一飛曹は関行男元大尉のもとを尋ねた。
 関は「十六歳といえば思春期だろう。好きにさせたらどうだ」と言った。
 「それに現在の日本のことも気がかりだから、二人にカメラを持たせて、日本の在り様を撮らせてみたらどうか」と盤雄に言った。
 「ではGXに乗せますか」
 「完全武装のGXか、それなら安全だ」と関行男元大尉が言った。

 セムと玉姫は最新鋭のGX宇宙船に乗り込んだ。関行男元大尉もロクサーヌも中野盤雄元一飛曹もリーズも見送りに来ていた。関行男元大尉は、日本ではお金が必要になるからと言って、金貨をセムに渡した。

 a0144027_11571023.jpgGX宇宙船はオリオン座のMC95から地球に向けて出発した。「これから九次元ワープする」とセムが言った。
 「わあー、如来様が見える」と玉姫が喜んだ。色んな銀河系の如来界が見える。
 「ほんとだ」セムも見とれていた。
 次々と幾つもの如来界が映っては消える。今度は地球の如来界だ。
 ひときわ高く聳え立つ高天原に二人は狂喜した。
 「ワープ解除」セムがGXに言った。そこには富士山が見えていた。オリオン座から、ほぼ半日の行程であった。

 セムはGX宇宙船を透明にし、明治神宮の木立の上に停止させた。
 「わーお、何あれ」玉姫が驚きの声を発した。
 神宮の杜から見える原宿の景色に二人は驚いた。さまざまなファッションが入り乱れている。すると今の二人の服装でも怪しまれない。

 セムと玉姫は、空中エレベーターで神宮の林の中に降りた。そして原宿駅から竹下通りを歩いた。玉姫は ぱちぱちと写真を撮った。その玉姫はブティックの前で動かなくなった。
 セムは金券屋に走り、金貨を札束に交換した。
 玉姫は「これ可愛くなーい」と言った。
 セムは「もうちょっと地味なのがいいんじゃないか」と言うと、
 「じゃあ、これは」
 「うん、それなら似合う」とセムが言った。
 「じゃあ、今度はセムちゃんの番ね」と言うと、
 「これはどう」
 「うん、いいと思う」とセムが言い、二人は着替えをして原宿の街を散策した。

 セムと玉姫はスターバックスの珈琲店に入った。素通しのガラス越しに表通りが見える。
 そのガラスのカウンターに二人は座った。そしてゆっくりとコーヒーをすすり、玉姫はガラス越しに 通る人々の写真を撮っている。超小型カメラだ、地球にはまだない。
 セムは目の前の大きな液晶ディスプレイ画面を見ていた。
 《北方四島はわが領土》と政府広報が出た。
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 セムは小型携帯端末でGX宇宙船の頭脳と、北方四島について交信した。
 ぞろぞろぞろぞろと真実が明るみに出て来た。
 玉姫にも携帯端末を見せた。
 「これはー泥棒じゃん」と玉姫が言う。
 「では仕返ししてやるか」と若いセムは言った。
 「仕返しって」
 「奪い返すのさ」
 「でも待って」と 携帯端末を見ながら「政府間で協議中みたいだから」
 「それではね」
 「それでは小さな小島、二島返還で終わるよ」

 a0144027_1243237.jpg「いいかい、僕のお父さんも君のお父さんも特攻で一度は死んだんだぞ」
 「国を守るために死んだんだぞ」
 「君や僕のお父さんだって、今ここにいたら同じことをすると思うよ」
 「うん、そおっかあ」
 父である中野盤雄元一飛曹のことを思い、玉姫はうなづいた。
 戦火で散った特攻隊員の無念も晴らそうと玉姫は思った。

 明治神宮の杜の中に入ったセムと玉姫は、GX宇宙船のエレベーターに乗り船内に入った。そして北方領土に向けて飛び立った。
 「戦略は」と玉姫が聞いた。
 「ない」とセムが答えた。
 「ないの」
 「ない」
 「さあて、国後から攻めるか」
 「いつも当てずっぽうなのね」
 「性格だから仕方がない」

 国後島に近づいてきた。海上では第五共栄丸がロシアの国境警備隊の高速艇に追いかけられている。
 「よし、最初の獲物はあれだ」とセムは高速艇に弾を撃った。
 玉姫は「なにを撃ったの」と聞いた。
 「しゅるしゅる弾だ」
 高速艇は海面をぐるぐる回り陸地に座礁した。
 セムは国後、色丹、歯舞群島、択捉の、全ての船舶に《しゅるしゅる弾》を打ち込んだ。こうして全ての船舶が標的になり、ロシアの国境警備隊はその機能を停止した。

 地上からは砲弾の嵐が襲いかかって来た。GX宇宙船には厚いシールドがかけられている。セムと玉姫は暫く花火見物をしていた。そしてGXの頭脳にロシア側の発射位置の緯度と経度を覚えさせていた。
 ロシア側の弾が尽きはじめると、今度はセムが高射砲陣地めがけて正確に撃ち返した。
 「今度はなにを撃ったの」とまた玉姫が聞いた。
 「しびれ弾だ」とセムが答えた。
 「なに命に別状はない、ただ三か月は足腰が立たん」
 「へえー」と姫は驚いた。
 玉姫も銃座に付いた。
 その後、セムと玉姫は、標的を狙いすまして、しびれ弾を撃ち続けた。撃たれたものは四つん這いになり、救護舎まで運ばれていく。その数、一万五千とも六千ともいわれた。

 a0144027_1285767.jpgロシアのSu35がしつこく花火を打ち込んでくる。それには特殊な弾を撃った。
 「何あれ」
 「あれか」
 「あれは、へろへろ弾だ」

 へろへろ弾を撃ち込まれたロシアのSu35は、操縦姿勢を保てず空中をぐるぐる回り、海中に没していく。パイロットは落下傘で冷たい海の中で一昼夜過ごすことになる。ロシアの戦闘機はもう千機あまりが海の中だ。

 「ねえ、それにしても遅いわ」と玉姫が言った。
 「なにが」
 「自衛隊」
 「そうだなあ」
 「あれほど自国の領土だと言っていたのに」

 自衛隊北部方面隊総監の陸将は悩んでいた。幕僚長ひいては政府の指示がないのである。ひとり気を吐いていたのは第五共栄丸である。仲間の漁船に無線で呼びかけている。
 「こちら第五共栄丸、ロシア船の姿が見えんぞ、今だ、大至急集まれ」
 「こちら第一さくら丸、了解した」
 「こちら第二共栄丸、了解した」
 「こちら第三栄丸、国後方面異常なし」
 「了解、こちら第一根室丸、歯舞、色丹方面も異常なし」
 各船、先を争って北方四島の方に舵を切った。これを黙って見ている海上保安庁ではなかった。巡視船が漁船を追いかけて行った。その巡視船から刻々と異常な事態が海上保安庁に届けられていた。

 GX宇宙船がみたび大きく揺れ、辺りは太陽のように光った。
 セムと玉姫はびっくりした。

 a0144027_12242091.jpgボレイ型原子力潜水艦二隻と、タイフーン型原子力潜水艦からの、小型核ミサイル攻撃であった。セムは図らずも本気を出してしまい、レーザー光線で海の底に沈めてしまった。



 暫くしてからハバロスクスから無線が入った。
 玉姫が周波数を合わせた。
 《こちら極東軍管区、宇宙船聞こえるか》《こちらロシア軍管区、聞こえていますか》
 「セムちゃん、ロシア語できる」
 「できん」
 「GXの人工頭脳に話してもらおう、もうだいぶロシア側の無線を傍受していたから、少しは話せると思う」
 「では人工頭脳の言語出力装置にマイクを置くよ」と玉姫が言い、ポンとGX頭脳の頭を叩いた。
 GX頭脳は「分かりました」と答えた。
 《こちらロシア極東軍管区総司令部、宇宙船聞こえていますか》
 《聞こえている》とGX頭脳は無線で応えた。
 暫くおいて、
 《なぜ我が国を攻撃する》
 これにはセムと玉姫は笑った。
 《ここは日本国領土である。一九四五年八月十四日に 日本がポツダム宣言を受諾したにも関わらず、貴国は八月二八日から九月五日にかけて、無断で上陸し占拠した。これは、宇宙連合第二百三十五条に違反するものである》とGX頭脳はいい加減なことを言った。
 《我々は宇宙連合に参加した覚えがない》
 《宇宙連合第二百三十五条は加盟の是非を問うてはいない》
 《そんないい加減な》
 《いい加減な方はどっちだ、他国の領土を盗むのはいい加減なことではないのか》
 《ではなぜ我が国だけなのか、紛争地域はまだ他にもある》
 《悔やむがいい、貴国がターゲットに選ばれた》とGX頭脳が言った。

 「自衛隊はこないなあ」
 「きっと私たちがいるからじゃない」
 「そうかもな、さっきP3Cを見かけたけど、とんぼ返りしてたもんな」

 a0144027_1725969.jpg「臆病な日本人、きっとお父さんが見れば悲しむと思う」
 「そうだろう」
 「神風特別攻撃隊だったからな、親父ー、どうしたらいいー」とセムは関大尉を呼んだ。
 《とにかくそこから離れろー》と言う親父の声が聞こえた気がした。

 それでセムと玉姫は、明治神宮の杜の上でGX機体を透明にして、原宿に戻って来た。 それから二人は秋葉原の電気街に寄った。
 そこのテレビで、しびれ弾を撃たれた択捉の兵士の姿が、ユーチューブにアップされた映像を見た。幸い原潜以外の死者は出ていない。しびれ弾に撃たれた兵士はおよそ二万と報じられていた。

 「二万人もいたっけ」だいぶサバ読んでいるなとセムは思った。玉姫は父の中野盤雄元一飛曹に九次元回線で電話をかけている。
 《どうして自衛隊は出て行かないの》
 《それは覚悟の問題だな》
 《覚悟って》
 《それは憂国の志じゃ、はたして日本を神国と思っているのか、またはただの》
 《ただの》
 《ただの島国と勘違いしておるか》
 《玉姫よ、よく見ておくがよい、高天原から神々が降りてこられるようだ》

 首相官邸の近くに豪雨が近づき、雷鳴と共に稲妻が走った。官邸の非常用の電源もおち、暗闇になった。首相が蝋燭を灯そうとしたとき、あたりには眩い黄金色の光が燦々と輝き、丑寅の金神が現れた。その背後には幾体もの神々が連なって見えた。
 丑寅の金神が「今すぐに防衛閣僚会議を開き、北方四島に出撃せよ」と仰せになった。
 「今すぐにだ」
 「は、はい」
 首相はすぐに各閣僚、陸海空の幕僚長を呼び、合議を重ね「本日未明を持って北方四島を奪還する」と宣言した。防衛省は急に慌ただしくなってきた。

 a0144027_12352144.jpg陸上自衛隊北部方面隊第五旅団は、歯舞群島を北上して色丹島に、第二旅団は国後島に、第十一旅団は択捉島に、各旅団は完全武装して上陸した。
 航空自衛隊北部航空方面隊は、千歳基地と三沢基地からF15Jが発進していった。
 海上自衛隊ではP3Cを飛ばし、ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、いせをイージス艦あたご、あしがらが護衛して向かっていた。

 ロシア側からの散発的な反撃もあったが、正午ごろには全島が制圧された。自衛隊員は各戸を回り、この島に残り日本国籍を取得するか、ロシアに帰るかと島民に尋ねた。大半が日本国籍を貰うことに同意した。
 ロシアに戻りたいという人には、傷病兵と共に連絡船を修理して、ハバロスクスまで帰らせた。護衛艦「ひゅうが」「いせ」からは大量の食料品と医薬品がヘリで運び込まれた。

 玉姫とセムはGX宇宙船に戻って来ていた。
 GX頭脳は《地球におできが出来ている》と言った。そのおできは《海面に顔をだし日の光を浴びたいと願っている》とのことである。
 その地球の吹き出物はどこか、玉姫は日本地図を広げて尋ねた。
 GX頭脳は《小笠原諸島から沖ノ鳥島》あたりだという。かなり広範囲に地球のおできが出来ている模様である。早く日の光を浴びせてあげたいと、二人は思った。
 「どうしたらいい」とセムは聞いた。
 《私にお任せを》とGX頭脳は言った。

 GX宇宙船は沖ノ鳥島まで飛んで行った。
 それから爆裂弾とレーザーメスを入れながら、小笠原諸島まで飛んだ。徐々に大陸が浮かんできた。なおもレーザーメスを照射した。
 大陸は顔を持ち上げた。
 その大陸が全貌を現したのは三日後であった。沖ノ鳥島も隆起していた。
 大小の島々に囲まれた大陸の面積は、九州をはるかに上回る巨大な大陸であった。その大陸は金やコバルト、ニッケルやレアアースなどの豊富な地下資源を持っている。
 海上保安庁と各報道機関の飛行機がその大陸の映像を映している。日本国民は唖然として驚き、株価はストップ高になった。

 a0144027_1214511.jpg航空自衛隊のF15戦闘機が宇宙船のそばに寄って来て、無線で《この大陸を作ったのは貴君らか》と尋ねて来た。
 《そうだ》
 《是非一度お話をお伺いしたい》
 《いいけど》
 《では本機についてきてもらいたい》
 《分かった》
 F15戦闘機は厚木基地で降り、続いてヘリコプターの先導で首相官邸まで行った。
 首相官邸前には総理が待っていて、宇宙船から降りて来た二人と握手をした。そして客室まで案内した総理は、
 「北方四島を奪還したのは君たちなの」
 「そう」
 「歳はいくつ」
 「16歳」
 「高校生だね、大陸を作ったのも君たち」
 「はい」
 「それで、どこから来たの」
 「オリオン座から」
 「地球までどれぐらいかかった」
 「およそ半日」
 「半日、へーえ、じゃあ このたびのお礼をしなくっちゃね」
 「お礼はいりません」
 「どうして」
 「二学期になるので、早く帰らないと」
 「神様からお礼はいただきます」
 「欲がないんだね、では今晩はホテルに泊まりなさい、最高級のホテルを用意するから」

 セムはGX宇宙船を透明にして、玉姫と高級ホテルなるものに向かった。総理補佐官が部屋まで案内し、明朝迎えに来るということだった。
 玉姫は部屋に入るや、「わあー」と言った。
 セムも「わっ凄い」と思った。
 六本木のそのビルは壁一面ガラス張りで、足元に東京の夜景が透けて見える。
 贅を尽くした豪華な食事を摂り、二人は久しぶりにゆっくりと風呂に入った。セムは、バスローブ姿で髪を乾かしている玉姫を見て、「いいもんだなあ」と思った。

 二人は二つある一つのベッドで折り重なるように眠った。
 その二人のそばに光り輝く丑寅の金神が現れた。辺りが大きく輝いた。金神はセムと玉姫に、光の環を投げかけられた。

 セムと玉姫は特急列車に乗っている。ここは最前列の見晴らしのいい席だ。セムは車掌に「この列車はなに列車」と聞いた。「霊界列車でございます」と車掌が言った。
 「終着駅は」
 「神界でございます」と車掌は答えた。
 「ねえ、セムちゃん見てみて」
 「わあー、綺麗なお花畑だ、妖精君もいる」
 それから人間界に入り、幾千億の階層を見た。
 「あ、天女さまだ、子供たちもいる、かわいい」と玉姫は喜んだ。
 「ほんとだ、輪になって踊ってる」
 そして徐々に霊界列車はスピードを上げ、菩薩界、如来界を通り越して、紫色の雲の上にそびえる高天原の峰に向かった。
 「わあー、きれいな眺め」
 「ここが太陽界かあ」
 列車は高天原の五合目で停まった。
 「終点でございます。どうぞ足元にはお気をつけて下さい」と車掌が言い、セムと玉姫が降りると列車は引き返して行った。

 a0144027_21471436.jpg駅に降りると まばゆいばかりの光を放つ女神さまがお待ちであった。
 「あ、天照大御神さまー」と玉姫は叫んだ。
 天照大御神さまは、セムと玉姫を招きよせ「このたびのお働き見事であった」「礼を言うぞ」と仰せになり、「それからこれは魔よけの褒美じゃ」「頭も良くなるから」といって、セムには銀のネックレス、玉姫には金のネックレスを直接首にかけてもらった。

 

「天照どの、それではネックレスをなくしたらどうする」と、一段と強いお光をお持ちの神様が現れて言われた。
 「あ、天之御中主の大神様、お下りになられましたか」
 「では私がこうしてやろう」と言って、セムと玉姫の手の甲に小さな判を押された。判には(御中主)と銘打ってあった。
 天照大御神さまは「よかったのう」と仰られた。
 と、ここでセムと玉姫は目が覚めた。

 セムの首にも、玉姫の胸元にもネックレスが光っていた。左手の甲にも(御中主)の銘があった。
 セムが「よかったのう」と言うと、
 玉姫も「よかったのう」といって笑った。

 軽い朝食をすますと総理秘書官が迎えに来た。それで首相官邸に行き別れをすました。総理は名残惜しそうな顔をしていた。セムは透明なGX宇宙船に向けてスイッチを押した。ブーンという音とともに宇宙船は姿を現した。
 「ではさようなら」と二人は言った。
 「達者でな、また来いよー」
 GX宇宙船は飛び出した。が、これで帰る二人ではなかった。また明治神宮の杜の上で宇宙船を透明にして原宿を歩いた。
 前に立ち寄った、スターバックスのガラス窓の席に座った二人はコーヒーを頼んだ。
 コーヒーを飲みながら、通りの向こうにある大型液晶ディスプレイを眺めた。国後島でハイビジョンテレビが支給される映像が流されている。玉姫は街行く人の動画を撮っていた。いろんな人がいろんな服装をして歩いている。どこへ何しに行くのだろう。
 ゆっくりコーヒーを飲み干した二人は「玉姫、帰るか」
 「うん」
 二人は神宮の杜から宇宙船に乗った。
 「帰りに大陸を見ていこうか」
 「うん、見たい」

 a0144027_17322459.jpg二人を乗せたGX宇宙船は、沖ノ鳥島から小笠原諸島まで続く巨大な大陸を見た。あと三年もすれば草木も生えるだろう。本島の平野部には早くも滑走路が出来始めている。




 「さあもうすぐ家だぞ」
 GX宇宙船はオリオン目指し、九次元ワープして帰っていった。
 セムは玉姫の胸元のネックレスを見て、
 「よかったのう」と言った。
 玉姫もセムの手の甲に押された(御中主)のハンコを見て「よかったのう」と笑った。



 「了」


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by hirosi754 | 2014-01-19 11:33 | 小説 | Comments(0)