「洞窟での出来事」野良猫との再会

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 a0144027_8245311.jpg吾輩は猫である。名前はまだない。
 とは、夏目漱石の小説である。
 だが私はまだ読んだことがない。



 黄疸に侵された重い体を引きずりながらも洞窟に入った。ここは横須賀にある、昔海軍が作った洞窟であった。山全体が縦横無尽に堀り巡らされた要塞になっている。
 誰も知らない洞窟であった。それもそのはず、私がむかし洞窟の周りを擁壁で囲ってしまったからである。出入口は一か所で、山の斜面を降りなくてはならない。その入り口は 私しか知らない。

 「余命三か月」と、身寄りのない私に医師が宣告した。
 「  」
 その時 私は肝がんに侵されていた。
 体全体に黄疸が出ている。下着は真っ黄色に変色していた。見舞客も来ない六人部屋の病室に戻った私は、ある決心をした。
 「そうだ」
 「あの洞窟に行こう」
 私は病室を抜け出していた。

 家に帰った私は、リュックサックに懐中電灯やら、蝋燭、寝袋、それに大量の睡眠薬などを詰めて、横須賀に向かった。
そしてかつて知ったる 擁壁の隙間から滑り降りた。
 そこには大きな洞窟の入り口があった。
 さっそく懐中電灯を点け、洞窟内の探検をした。横幅高さ3メートルの洞窟が縦横に走ってる。ところどころ小部屋が掘られてあった。

 a0144027_7411336.jpg岩山の中ほど辺りになる小部屋に、装いを解いた。
 何でもここから 木製のボートに爆弾を積んで、敵艦に突撃するために作られた最前線の要塞らしいと言う話は聞いたことがある。
 「ここに木製のボートがあったのか」
 「そうすると、この部屋は将校用の詰所かな」
 などと思いながら蝋燭に火を灯した。
 そして寝袋に半分収まり、焼酎をミネラルウオーターで割り、睡眠薬を大量に飲んだ。ここは程よく暖かい。いつしか睡魔に襲われてきて、こんこんと眠り始めた。

 「こっちにおいでー」と、お袋と親父が呼んでいる。
 眼の前には三途の川が流れている。
 その川を渡ろうとした瞬間、一匹の野良猫がこちらのほうに泳いできた。そして私を見るや、あれっと口を開けた、我が口中めがけて飛び込んだ。
 私は猫を飲み込んでしまった。
 猫は私の腹の中で あちこち動き回っている。
 三途の川の向こうでは、まだ「こっちにおいでー」とお袋や親父が呼んでいた。
 川を渡ろうとすると、
 「痛っ」
 猫が私の臓器に食らいついてきた。
 私は口を大きく開けて猫を追い出そうとしたが、なかなか出てこない。
 猫はがつがつと臓器を食べ始めた。どうせ白骨死体になる身だ、お釈迦様も ひもじい虎の前に我が身を投げ出されたそうだ。食わせるだけ食わしてあげようと、私は川を渡るのを断念した。

 睡眠薬の効き目はわずか三日間で終わった。
 その後、激しい後遺症に悩まされた。ぼんやりとした眠気と、焦点が定まらない目まいに襲われた。ここは暗闇の洞窟である。朦朧とした意識と戦いながらも懐中電灯を探し、蝋燭に火を灯した。
 洞窟を掘ったノミの跡が美しく幻想的であった。
 そういえば、猫の霊はまだ口の外に出ていない。がりがりがりがりと私の臓器を食べている感じがする。
 「あの猫は何なんだ」皆目見当がつかない。
 a0144027_91969.jpg私はリュックサックをひっくり返し、まだ残っていた睡眠薬を飲んだ。そして飲んではいけないと医師に言われている焼酎をがぶがぶと飲んだ。
 混沌とした頭と体に再び睡魔が訪れた。


 私は三途の川の淵に立っていた。
 お袋と親父は「こっちに来ちゃだめよー」と叫んでいる。
 「んっ」
 この前とは違う。
 「どうしてなんだよー」と、私は言った。
 「どうしても、こっちに来てはだめだよー」と、お袋が言った。
 「どうしてー」と私は言った。
 その時、私は激しい下痢に襲われ、眠りから覚めた。

 それからが地獄だった。
 三分おきにくる便意苦しめられた。そのたびに洞窟の入り口まで走った。だが何も食べてはいないので、お汁みたいのが少し出るだけだった。それでも強烈な便意に入り口まで走った。尻を拭く葉っぱはもうなくなっていた。
 今度は下血だ。ものすごい勢いで血が流れた。
 その時、脳からの激しい痛みが上半身を襲い、景色が歪んで見え、視野がなくなり失神した。脳こうそくの初期の前兆だった。
 そういえばここ十日ほど、飲まず食わずであった。典型的な脱水症状である。
 でも下血の意味が分からない。猫が臓器をかじったり舐めたりしたせいなのか、あの猫、いつになったら口から出ていくのだろうかと、そう考えながら、洞窟と擁壁の間から蔦を伝わって流れ落ちる清水に口を運んだ。

 下痢が少し収まってきた。食欲はとうに感じなくなっていた。ペットボトルに貯めた清水だけを飲んでいる。それでも何故だか生気が出てきたように感じられた。
 その夜、薄暗い蝋燭に照らされた洞窟の中で、猫が口から出て来た。
 猫は何かを吐き出すように「ゲッゲッ、ゲッ」とゲロをし、吐き出していた。その時、猫の正体が分かった。

 a0144027_893353.jpg「野良か」
 「にゃあん」
 「言葉は話せるか」
 「話せる」
 「あれからどこへ行ってた」
 「車に轢かれた」
 「そうだったのか」
 「でも今は猫の天国にいるぞ」
 「あれから猫缶を開けて毎日待っていたんだ」
 「知ってる」
 「ところで、今なにをゲロしていた」
 「あなた様のがん細胞」
 「えっ、」
 「  」
 「取れたのか」
 「取り除きました」
 「うーん、そこまでの恩義をお前にしたか」
 「毎日のお食事を作っていただきました」
 「そうか、たったその恩返しのために帰って来てくれたのか」
 「にゃあん」
 そして私はリュックサックの紐で猫じゃらしを作ると、野良は紐に夢中になり、背を丸め飛びかかったりして じゃれあった。
 「野良はいつ見ても元気だなあ、あの世でも達者に暮らしておるか」
 「はい、旦那様、でもあなた様は早くこの壕から抜け出さないと体力が持ちませぬ」
 「そうか、そうだな」
 「では旦那様、野良は帰ります。どうか御達者で」と言うと、野良猫は消えて行った。

 私は帰る準備をしていた。
 飲まず食わずで一週間、清水を飲んで六日間、体力は極限までに落ちていた。だが体重が十キロほど軽くなったせいで、洞窟と擁壁の間の崖を何とか這い上がった。ちょうどここが洞窟の岩山の真上にあたる。
 それから駅までの二十分は苦行であった。横須賀の駅のトイレで顔を見たら、髭は伸び放題、髪は薄く萎えて顔色はなく、頬はくぼみ まさに幽鬼のような形相であった。
 京浜急行では、あえて人の少ない各駅停車の鈍行に乗った。乗りながら「速攻元気」というゼリー状の栄養剤を何本も飲んだ。それにつけても我が身の臭さが鼻に付いた。
 家に帰ると萎えて震える体で風呂に入り、身支度をして病院に戻った。

 a0144027_7452533.jpg病院では骨と皮になった私を見て、医師は驚いた。
 さっそく点滴を五、六本打たれて、コンピューター断層撮影、CTスキャンが行われた。
 肝がんは消えてなくなっていた。
 「ええっ」と、医師は驚いた。
 「どうして」
 私は説明しても分からないだろうから、黙っていた。
 それに猫に喰われたとでも言ったら、狂人扱いされるだろうことが明らかだ。医師の大半が無神論者である。どのように説明しても分かりようがない。
 医師はこれをカルテにどう書けばよいのと悩んでいた。

 無事退院した私は、我が家に戻った。
 その入り口に子猫がいた。野良猫と思われる。
 だから名は、まだない。
 そこで私はミルクを与え、家で飼うことに決め、名をミケと名付けた。

 「にゃあお」
 親猫であった野良が嬉しそうに哭いた。



 a0144027_7471584.jpg野良は猫の天国に帰って来ていた。
 そこは美しい草花が生い茂り、花の妖精たちが舞う植物の天国の上にあった。
 野良たち大勢の猫は、ねずみ型ロボットを追う遊びに興じていた。ねずみを捉えた褒美には、サンマが与えられる。花の妖精たちも訪れた。その花の妖精たちとも じゃれあっていた。猫たちがしつこく追いかけると、妖精たちは笑いながら またたびの枝を投げる。その度に、猫はおとなしくなる。ここは猫たちの楽園であった。

 そこへお釈迦様が降りてこられた。
 猫たちはびっくりして猫正座した。
 「ここに人間を救った猫がいると聞いた」「お前か」と、野良を呼び、
 「褒美に何か一つ望みを叶えてやろう」と、お釈迦様が仰った。
 野良は、「ひと時でも明行を幸せにしてあげたい」と言った。
 「どうやって」と、お釈迦様は仰った。
 「女になって」
 「それは無理じゃ、明行は女にはなびかん」
 「しかし」
 「ん 」
 「でも他に方法が思いつきません、旦那様を幸せにする方法が…」と、野良が言った。
 「うーん、けな気な猫じゃのう」と言われ、
 「野良よ、では三日の猶予を与える、その三日の内に明行の心を捉えてみるがよい」と、お釈迦様は仰った。
 「それでは一度、ここで化けてみよ」と言われ、
 野良は二十四、五歳の美しい女性に化けた。
 「おっと、素っ裸では困る」と、お釈迦様は仰り、人間界から仕立て屋を呼んだ。それに二十四歳で夭折してこの世に来た、若いOL美佐子も呼んだ。
 野良は美佐子の半生と、その持てる知識を共有させてもらった。美佐子は野良にネイルも施した。仕立て屋は上品な服装を選んだ。
 「あらー、綺麗なこと」野良は鏡に映った自分の姿に溜め息をもらした。

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 野良は横浜の関内駅に降りた。手には美佐子のデビットカードを持っている。相当な金額があった。そのカードをブラジャーの中にしまい、大通公園を歩いた。行く先々で男どもがじろじろと見る。それほどの美人かと野良は悦にはいった。

a0144027_1323254.jpg ようやく明行の家に着いた。かつて知ったる我が家であった。子猫の泣き声が聞こえる。 「わが子か」野良はあまりの愛おしさに涙を拭いた。


 明行は子猫に餌を与えると家から出て来た。どうやらコンビニに向かうようである。野良はその後をつけた。どう見ても風采が上がらない。これでは女にはもてないと思った。

 明行は弁当売場をのぞいていた。
 「また三食コンビニ弁当かよ」と、野良は思った。
 そこで、
 「おい」と、明行の肩を叩き、
 「焼肉にしよう」
 「ね、そうしましょう」
 「ひとり焼肉は嫌だもんー」と、大声でなれなれしく言った。
 コンビニ店内にいた客の大半が、明行と絶世の美女を振り返った。
 「な、何か どなたかの間違いでは」と、明行が言ったが、
 「なに、照れちゃって」と、明行の腕を強引に組んでコンビニの外に出た。
 明行は顔を赤らめ、薄っぺらい財布を見て、
 「や、や、焼肉と言うと、ど、どこがいい」と聞いたが、そこは目の前にあった。

 テーブルをはさむと自己紹介をした。
 「おれは明行」
 「知ってる」
 「え、」
 「ああ、いやブログの読者で、お顔は」と野良は言った。
 「そう、貴女のお名前は」と明行が聞いた。
 「私は美佐子、秘書をしていました」
 「へーえ、頭のいいお嬢さんなんだなあ」と美佐子を見て明行が言った。
 料理が運ばれてきた。美佐子は次々と焼肉を焼けた網の上に乗せて、
 「お飲み物は」と聞いた。
 「焼酎の水割りかな」
 「じゃあ、私も」と美佐子は店員に言った。

 a0144027_10175731.jpg「美味い、実に美味い」明行の体に久しぶりに肉が入った。焼酎も はらわたに染み込んでいった。しかもこんな美人と二人で酌み交わすなど、生涯一度たりともなかった。
 「猫を飼っていらっしゃるの」と美佐子は、明行の服に付いた猫の毛を見て言った。
 「ああ、子猫ね、ミケと言うんだ」
 「その子、幸せそうね」と、美佐子が言った。
 「だと思うけど、これは焼けているよ」と焼肉を、美佐子の皿に箸でつまんで乗せた。
 美佐子も嬉しくなって、「野菜も食べなくっちゃ」と、明行のニンニクを効かせた小皿の上に、焼けた玉ねぎとピーマンを乗せた。
 二人はほろ酔いになっていた。美佐子は女店員が注ぐ視線にも感ずいていた。女がおんなに惚れている視線であった。
 勘定は明行が払った。
 美佐子は「じゃあ またね」と言って、伊勢佐木町に消えて行った。
 「あれえ」明行は薄くなった財布を眺め「また だまされた」と思った。

 次の日、明行はいつものコンビニに行ったが、
 「明行見っけー」と大声で美佐子が叫び、腕をつかまれ店外に出た。
 そこにはもう一人の美女がいた。
 「紹介しまあすー、こちらが明行さん」
 「こちらがー、お友達の知子さん」
 「じゃあ、行こうか」
 「どこへ」と、明行が聞いた。
 「知ちゃん、どこがいい、初対面だから喫茶店でいいっか」と二人で決めてしまった。

 a0144027_8182792.jpg伊勢佐木町にある老舗の古びた喫茶店の、奥まった座席に三人は向かい合った。
 ここは静かだ、客は一人しかいなく新聞を広げて読んでいる。ウエイトレスに紅茶とコーヒーを頼んだ。
 「お仕事は何をされています」と知子が聞いた。
 「漫画と小説を少し」
 「それで食べていけますの」
 「いや、金にはならん」と明行は言った。
 美佐子はまずい雰囲気になるなと思って、
 「明行さんは以前大手の建築会社にお勤めで、大病を患って会社をお辞めになったの。だから今は充電期間ということで、ははは」と、取り繕った。
 「どうして知ってる」と、明行は美佐子に聞いた。
 「どうしてなんでしょうね、ははは」と、答えられずに美佐子は笑ってその場を濁した。
 「一度漫画を見せてもらえます」と知子が言った。
 「ああ、いいですよ」
 「漫画とか小説はアイディアが勝負なんでしょう」
 「まあそうです」
 「今度、お家にうかがってもよろしいですか」
 「もちろん、お二人でどうぞ」と盛り上がっている。
 「知子さんのお仕事はなんですか」
 「美容師です」
 「へーえ、おれも本業を探さなきゃ」と言ったら、
 「漫画家でいいんじゃなあい」と、意外な言葉が返って来た。

 a0144027_8211110.jpg翌日曜日、美佐子と知子が我が家に尋ねて来た。突然の訪問で明行もうろたえた。
 「うわー」っと、二人の女は驚いた。
 それもそのはずで、漫画のコピー用紙とA4の原稿用紙が部屋中に散らかっていた。子猫が丸まったその用紙に、じゃれあっている。ソファーには衣類がそのまま脱ぎ捨ててあった。女たちは部屋の掃除を始めた。大きなゴミ袋が二つもできた。
 掃除が終わると、美佐子はわが子である子猫の喉を優しくなでた。「ゴロゴロ ゴロゴロ」と子猫が嬉しそうに喉をならしている。
 明行は「お茶がないので 水でよかったら」と水道水をコップに注いでテーブルに置いた。
 知子は「わたし食事を作る」と言ってキッチンに入ったが、使った痕跡がない。
 冷蔵庫を開けるとそこは空であった。
 知子は「お鍋にしようか」と言って、「買出しに行ってきまーす」と近所のスーパーに出かけて行った。

 美佐子は明行をベッドに押し倒し、口づけした。舌と舌を絡ませて互いに唾液を吸いつ吸われつ、強く頭を抱きしめながら口づけし合った。明行の体の一部が固くなってきている。
 「ただいまー」その時、知子が帰って来た。
 手にはたくさんの食材が入ったビニール袋を下げている。
 知子はさっそく料理に取りかかった。おいしいにおいが部屋中に充満した。美佐子も手伝っている。身寄りのない明行には久しぶりの家庭料理だった。
 鍋をつつきながら美佐子が言った。「あしたから遠いところに行くので、二人とも仲良く暮らしてね、おねがい」
 「ええ」と、二人は驚いた。
 「どこに行くの」
 「アメリカ」
 「ううん、それより遠いところ」

 a0144027_8194.jpg「知子ちゃん、明行でよかったら付き合ってあげて。それから明行、知子の言うことに逆らっちゃダメだよ、分かった」
 「知子それでいい」
 「遠いところってどこ」と知子が聞いた。
 「それは秘密」
 「僕はいいけど、知子さんはどう」
 知子は少し考えて、
 「引っ越ししてきてもいい」と知子は聞いた。
 「全然OK、ここは僕の持ち家だから、いいよ」と明行は言った。

 それから一週間後、知子は引っ越ししてきた。
 ホテルでは何度か一緒に風呂に入ったが、この家でのお風呂は初めてだった。お互いの体を洗いながら明行は「何とか仕事を見つける」と言ったが、「今のままでもいいよ、面白い漫画を描いてね」と知子が言った。見上げたおなごだ、と明行は思った。

 その後、美佐子からの一通の手紙が届いた。消印は、日本国霊界第四区と打ってあった。不思議に思い 知子と一緒に封を開けると、美佐子のデビットカードと暗証番号を書いたメモ、それに宝くじが一枚入っていた。メモには「カードは自由に使ってよし、宝くじは絶対になくしてはダメ、それに子猫もよろしくお願い、それから知子を大事にしてあげて、決して知子には逆らわないこと、知子もわがままを言ってはダメ」と書かれてあった。
 明行はあらためて知子を強く優しく抱きしめた。知子の体から力が次第に抜けていった。


 a0144027_18552272.jpg美佐子であった野良は霊界第四区、猫の天国に帰って来ていた。
 そこへお釈迦様が降りてこられた。
 ロボット遊びに興じ、飛び跳ねていた猫たちはみな仰天して正座した。
 お釈迦様は「野良よ、でかした。ところであの宝くじは何だったのか」と聞かれた。
 「一等くじであります」と野良は答えた。
 「はっはっはっ」とお釈迦様はお笑いになられた。
 そしてお釈迦様と一緒に来ておられたOL美佐子に、記憶を戻した。
 野良は普通の野良猫になった。

 地上では明行が猫の漫画を描いている。
 「霊界第四区か」これは面白い。あの私を救ってくれた野良猫はどこにいるのだろうか、朝げの準備をしている知子に、今までにない深い愛情を抱いていた。
 「吾輩は猫である。名は…」
 支度を終えて新聞を見ていた知子が、「あなたこれ見て」と宝くじの当選番号を指さした。




 「了」                                  作 森田 博

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by hirosi754 | 2013-12-29 07:13 | 小説 | Comments(0)