「神曲」 1-6 prologue

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055.gif 「亜衣姫と羅夢王」 を お読みになりたい方は、こちらからどうぞ。

 「プロローグ」

a0144027_23512934.jpg 仁安元年(西暦1166年)、M61星雲の中にある星から、一船の長さ二キロにもなる宇宙母船団が、漆黒の宇宙を 一路 地球に向かって航行していた。
 「セム中尉、あれが地球です」と副艦長のアレン少尉が言った。
 また時を同じくして、鷲座の惑星状星雲NGC6781の惑星から一艘 船団より離れて、日本の仙界を目指して 大宇宙を航海していた。
 「ほう、あれが地球か… 」がらんとした宇宙船の中で ひとり呟いた。
 そして、日本の仙界と高天原に降りた。またM61の一部の船団は、他の星を求めて航行を続けた。M61から来た星の母船には セム中尉と玉姫、アレン少尉とミール准尉たち 多くの人達が、MGC6781の星から来た宇宙船には、セシルひとりが乗っていた。


 「第一部」

               1
a0144027_915821.jpg ここは、ガダルカナル戦線、死霊たちの部隊である。
 中隊長は、自分の亡骸を見ている。
 「  」
 骨と皮と蛆虫である。
 哀れ補給路が絶たれ、累々と無数の餓死者が横たわっている。その餓死者もまた自分の亡骸を呆然と見つめていた。旧式の三八式歩兵銃と、これまた総重量 五十五キロにもなる、九二式機関銃を分解搬送しながら、未だ敵兵に遭遇せずして 部隊は全滅した。いやむちゃくちゃ戦闘はしたのだが、部隊は全滅した。
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 中隊長は「このままでは どうにも死に切れん」と言った。いやもう、とうの昔に死んでいるのだが 部隊を召集した。ひょろひょろと、死霊たちが集まってきた。中隊長は「さぞや悔しかっただろうなあ」と思った。皆、衣服はぼろぼろで、死んだお蔭で激しい下痢やマラリアも治まっていた。

 「何か好い知恵はないものか…」
 真夏の熱帯樹林の中で、大田晴海大尉は嘆き、部下の死霊達に言った。その、青膨れした死霊の中の河部曹長が、「先発の川口支隊には、まだ生き残っておる者がいるという噂なのですが」と生存者のいることを告げた。
 「えっ、そんなことは聞いたことがないぞ、お前はどうだ」
 「知らんなあ」「仮におったとしても、戦闘能力は無いと思うがなあ」と伊藤上等兵、鬼塚二等兵ら、死霊達が口々に言い合った。
 「そうか、でも 生きていれば何とか彼らを援護しよう」と大尉は言った。自分のしゃれこうべから、ペンペン草が生えているのを見て、「はあっ、死んでいるのにどうして援護が出来ます」と皆が聞いた。「そこは分からん。分からんが、ここにいても埒があくまい」と言い、「ひょっとして、何か出来ることもあるかも知れん」との大尉の結論になった。

 早速、もと来た道を引き返すのだが、今度は歩く必要が無い分、随分楽であった。亡骸は延々と続き、見たところ何処にも銃創の痕が見られなかった。餓死者は至る所から現れ、死霊軍団は益々増え、千名を数える大部隊になっていた。一木清直陸軍大佐は、まだ生気があるうち軍旗を焼き、割腹したのち、頭に拳銃を宛て自決し、もうこの世にはいなく、早々と靖国に飛び立った。
 「わ、死んでる… 死んでるぞっ、」
 「何たる大佐殿か、我らを先において帰還するとは。共に生ける屍ではなかったのか」と言い、「情けないぞうー」と叫んだ。
 そしてその声は空しく、ジャングルの奥深くまで吸い込まれていった。

 大本営は、昭和十七年(西暦1942年)十二月二十五日に、ガダルカナル島からの撤退を決めたが、その連絡が途絶え 逃げ遅れた中隊であった。上官らはラバウルへと、戦況の報告に行き、二度と帰って来なかった。そしてその頃、日本国民に対し初にして、次の転進命令がラジオで伝えられていた。

a0144027_12134429.jpg 「大本営発令、ソロモン群島ノ ガダルカナル島ニ作戦中ノ軍隊ハ、昨年八月以降、激戦敢闘克ク 敵戦力ヲ撃嶊シツツアリシガ、ソノ目的ヲ達成セルニヨリ、二月上旬同島ヲ撤シ、他ニ転進セシメラレタリ」
 つまりこれらの兵は、内地に帰されることもなく、南方激戦地に留め置かれ、見捨てられたのである。日本軍の諜報機関である、ユダヤ人、べラスコの「東(トウ)」情報は完全に無視されていた。
 『べラスコの告白』 は、こちらから。>
 更に驚くべきことには、「作戦の神様」と言われた、辻政信 参謀本部作戦参謀は、実情を無視した攻撃を強行し、迅速な対応を執ることもなく、ガダルカナル島の地獄の戦場から、ひとり駆逐艦で撤退していった… 。

 そしてついに、生きた兵隊に出会えた。


               2
 そこは生きた者同士の、寄り合いの川口支隊であった。五拾数名の部隊に縮小していた。ラバウルに行き、未だに帰って来ない川口清健少将の代わりに、ここを指揮するのは、阿南(あなん)英隆中佐である。海軍工兵隊生き残りの阿南中佐は「おやっ」、この敬礼している大田大尉が、もはや人ではないことを察知していた。なぜなら時折透けて見えたりもするのだ。「ありゃあ、透けとるばい」と阿南は内心驚いていた。

 「中佐殿、この戦いは どうみても無理があります。止めましょう。止めて、終戦まで畑を作って自活しませんか」
 「自っ、」
 「は、畑をてっか、こぎゃん島にか」

a0144027_915045.jpg 「ラバウルでは、地下壕に畑を作って、自給自足していると聞いておりますが。軍旗も焼いたし、一木支隊も滅んだし。敵兵は、我らが衰弱して死んで行くのを、ただ 見ておるだけです」と大田晴海陸軍大尉は言った。
 「我等は、米軍がタワラ島に移動していたのを見ておりました。彼らは、初めから、我らを眼中には入れてはおりません。今 我らが死霊部隊は、ざっと千名には下りませんが、ただ何分死人ですので、歯向かうすべを知りません。ここに来る途中、金縛りの術を教えたところですが… 」「中佐殿、次の一撃でもう戦争は止めませんか、無理です」と大尉が 青い唇を噛み締めて言った。
 「うーん、そん死霊部隊というもんは、私には 見える者なのか」と中佐が聞き、「目を凝らして見てください。部隊は目の前に、隊列を組んでおります」と大尉が 大日如来の印を組んだ。すると、そこには千人ほどの隊列を組んだ、死霊部隊が浮かんできた。

 「情けん無か… 金縛りってか、そこまで堕ちよるとか」
 「そんでもな、金縛りに会わせた敵兵を殺すことは出来まい。士道に反ばしとらんのか」と阿南中佐が言い、「し、士道ですと」と大尉が驚きつつ応じて、「我らが敵兵を身動きが出来ないようにしておきますので、中佐殿らが手足を縛ってください。大丈夫です。たとえ百人掛りでも、我が亡霊共が 首ねっこを押さえつけ、金縛りに合わせますから、決して じたばた暴れるようなことはさせません」と言った。
 そしてこれから敵の飛行所を調べに行くのだと言う。大尉は、「食料、武器、弾薬の在りかを図面に書いてお知らせします」と言い残し、皆に号令をかけ、死霊部隊が隊列を組みながら、徐々に 透明になって 行ってしまった。

 阿南中佐は、「あん念動力は何処から来よるとか」と不思議に思いつつ、「まだ補給船は来んのか」と通信士官に言い、何時までたっても電信は来なかった。真夏の太陽がこの島を照り返していた。灼熱と、飢餓と、屍の山の幽玄な島であった。


               3
a0144027_231050.jpg 大田晴海大尉は、ジャングルの中をすり抜けていた。
 熱帯樹林の中を、死霊部隊もすり抜けていた。少しは肉付ずきも良くなったようである。一木支隊が向かわんとしていた、元は日本軍の飛行場、ヘンダーソン基地である。隊列を崩さず真っ直ぐに正門から入いって行った。

 大田大尉は、死霊部隊が壁から壁へ、兵舎から兵舎へ、情報を集め すり抜けていく、我が死霊部隊を見つめていた。そこへ フィリピンから飛んできた アメリカの輸送機が、大田大尉を丸ごとすり抜けて着陸した。それで大尉が中身を見ようと機体の中を調べたら、その機体後部には、山下奉文大将が隠し持っていたといわれた軍資金の、丸福金貨と 金の延べ棒が積まれていた。また英語が得意な 伊藤英俊上等兵が、高官の机の引出しにある重要書類をかきまわしていた。そして ついに最高機密文書を入手し、大尉に翻訳した。

 それには、近々、テニアン島から、原子爆弾とプルトニュウムの核爆弾を、京都か、広島の中心部か、小倉か、長崎の市街地に落とせと書かれている、ワシントンのグローブス少将から、米軍副司令ファーレル准将に宛てた、原爆の使用を許可した、極秘の傍受電文であった。
 「二発もか」「その原爆って何なんだ」

a0144027_210934.jpg 「それか、それはな、ウラン235の原子核に核分裂を起こさせてな、二、三個の中性子を出させ、その中性子がまた別の原子核に当り、核分裂の連鎖反応を起こさせてな、ど派手に ぶっ飛ばすというやつだ」
 「へー、お前は物知りやな、本当かいな、本間軍曹」「ほんまやで」「でもそうすると もう時間が無いぞ」と鬼塚二等兵が言い、「あの飛行基地は今夜にでも落とそう」そう大田大尉が言った。この機密電文の知らせを聞いた 阿南英隆中佐は、死霊部隊からの報告を何が何処にあるのかと、仔細に絵図を書かせた。

 「大尉は今夜にでも 飛行場ば落とそうと言うばってんが、そん 金の延べ棒と、丸福金貨とかいうもんば、何処に収まうとか」
 「ああ、それね」と昨日、蝙蝠を捕らえに行った場所を思い出し、「それだったら 良い所があります」と頬はこけ、手足は細く 血管が浮き出た山根伍長が言い、入り口が非常に狭い洞窟に案内した。後で塞ぐには もってこいの場所であった。米軍も ここからタワラ島に、一万三千人を移動させたらしい。残る米軍、合わせても二百名ぐらいで物の数ではなかった。
 さて 決行は今晩として、細部にわたっての詰めの協議が行われた。

 そしてその夜、
 金縛りになった敵兵に、生きている兵隊が素早く猿ぐつわを噛ませて、手足を縛った。残りの兵隊は、弾薬と兵器類、それに飛行機も一箇所に集め、頃合を見計らって 航空燃料が燃えるようにした。装甲車二台に皆は乗り、そこに金の延べ棒と丸福金貨、そして食料を積んで、白々と夜が明けかけ始めた 朝靄の中のジャングルを遁走した。
 遠くで 大爆音が聞こえてきた。


               4
 《 阿南英隆中佐は、その夜 不思議な夢を見た… 》
 …
 「日本に行くか」
 「ええっ、日本に」
 「それは遠いぞ」「でも俺達は日本人に似てるよな」
 「うん似ている」「分からんよな」
 「分からんが遠いぞ」
 「地球かあ… 」「銀河の向こうだぞ」と二人は、この星の太陽を見つめた。
 その恒星は老い、ガスを吹き始めていた。今は最後の力を振り絞り、ギラギラと核燃料を燃やしているが、いずれ超新星の大爆発を起こし、ブラックホールとなって周りの惑星を呑み込んで行く。二人は改めて 一億四千二十チャンネルの日本のテレビを見た。明日は広島に原爆を落とされて、✕✕回目にあたる慰霊祭である。三日後は長崎の、天草四郎の首塚の真上に、プルトニュウムの核爆弾が落されているかどうかである。
a0144027_1435265.jpg 「行くか」「うん」
 「ここにいてもいずれは死ぬし、紳界を選ぶなら高天原の紳界の方が、人間味があって楽しいかもしれないな」「だけど時空移動宇宙船は、まだ二回しか試験飛行をしてはいないぞ」「なに二回で十分だ」とリエールが言った。
 それでしぶしぶクリスは「もう時間も無いしな」と言った。この星の人達は皆、それぞれ自分に合った宇宙船を造って、我先にと逃げ出している。リエールは時空移動船に日時と場所をセットした。
 「日時、西暦20✕✕年(平成✕✕年)八月六日八時十五分、場所、広島市相生橋上空」 そして クリスと一緒に地球に飛んだ。

 …
 広島上空は快晴であった。
 …
 あれっ、
 「おい、何か様子が違うぞ」

 すぐ目の前を、宇宙船と共に 大きな鉄の塊が落下している。
 頭上を見上げると B29が一機、飛行機雲をつくりながら飛び去っていた。
 高度八百、高度七百、もう高度六百二十七、慌ててリエールは日時を見た。その宇宙船の計器に愕然とした。
 「リ、リトルボーイ!」

 時は、西暦1945年(昭和二十年)八月六日、高度は六百二十七メートルであった。T字形の相生橋を行き交う人々の顔が、くっきりと目の前に飛び込んできた。リエールは急いで時空移動のレバーを押した。そしてその直後、広島上空で原爆は破裂した。
 …
 《 と、ここで阿南英隆中佐は、寝汗をびっしょりかいて目を覚ました 》
 「相生橋かあ、間に合ってくれれば好いが… 」と 阿南は、その橋を行き交う人々の顔に目を潤ませ、広島に思いを馳せた。


               5
 死霊部隊には 金貨も食料も必要が無い。いま 急ぐべきは、テニアン島である。
エノラ、ゲイ号は既に離陸した後であった。急ぐ必要がある。死霊部隊はその後を追い、飛んだ。
 広島上空に、真白き閃光が走った…



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 !…
 「E=mc2 □」
 「  」
 「あっ、ああああああーっ」
 くそっ、
 「くそ、遅かったか、」と大田大尉が吼えた。

 その赤黒い火炎の中に、一瞬にして魂ぱくとなってしまった無垢の魂が、無数の魂同士で、何処が自分の手やら、足やら判らなくなった状態で お互いにくっ付いている。これはえらい事になったなと、大田大尉と死霊部隊の全員が思った。更に、立ち上るきのこ雲を見て、二機目は絶対に阻止するぞと、再びテニアン島に戻って来た。

a0144027_2352152.jpg それは、暗号名「ファット・マン」という、巨大な爆弾であった。「これを落とそうというのか、それにプルトニュウムって一体何だ」と死霊の一人の、河部曹長が言った。「倫理など無いのか こいつらは!」と鬼塚二等兵も言った。
 「赤子の真上にか、こんなことが許されていいものか」と伊藤英俊上等兵も言い、「何処か 無人島にでも落とせば良いものを、日本人は 原爆の生体実験に晒らされている」と河部曹長は思い、「やはり人種差別なのか」と、目の前の米国兵パイロットの股ぐらを蹴り上げた。

 今度のB29には 死霊部隊の全員が乗り込む手はずにして、あと三日はかかることを知った大田大尉は、中佐の手伝いに ガダルカナル島に一時戻り、装甲車から金貨と食料を降ろすと、洞窟に運んだ。中佐は、「長崎にある、天草四郎どんの首塚の真上に(浦上天主堂に、「動画試聴」)、原爆ば落としてはくれるな」と言った。その洞窟は 熱帯樹林に覆われ、隠れ住む所には もってこいの場所であった。手榴弾で、蝙蝠を一網打尽にし、串焼き用に集めた。二台の装甲車は遠くの藪に隠した。阿南部隊が入るには、適度な広さであった。
 だが蝙蝠の糞は臭かった。そこで糞をさらい、草の葉を燻して、火薬の臭いでくさみを消した。そして更に棕櫚の葉を織り敷き詰めた。

 米軍の関心は、ここには無かった。それに伊藤上等兵によると、米軍の資料では、沖縄は事実上占領下に置かれ、あの戦艦大和が轟沈されたと言う。また過ぐる、三月十日には、マリアナ諸島より飛び立ったB29により、三十七万七千発のM六九焼夷弾が 東京上空に落とされ、赤々とした紅蓮の炎に包まれ、幾つもの巨大な火災旋風を生み、十余万人といわれる、無垢の命が焼け死んだとのことであった。







 「!… 」
 「大量殺戮か、それは酷ごか」
 敗戦は時間の問題だな、と阿南中佐が言い、不味いも何もあったものではない、蝙蝠の串焼きをつまみ、戦利品のウイスキーの瓶を取り、皆で飲んで、唄って、騒いだ。

 「よか、敗戦までここにおっか」と、ほろ酔いの阿南中佐が大尉に言った。大田大尉は草笛で「青葉の笛」を吹いた。「 ♫…一の谷の、戦(いくさ)敗れ… 討たれし平家の、公達(きんだち)哀れ…♫ 」と、 訳知らず嘗ての自分の唄を吹いていた。死霊部隊は再びテニアンに戻り、あの閃光を二度と起すまいと心に誓った。


               6
 いよいよ二機目の、プルトニュウム核爆弾を積んだ飛行機が、機内には千人を越す死霊部隊の全員が乗り込んでいるのも知らず、テニアン島から発進した。そしてあっという間に憑り付かれた。事実上、操縦桿を握っているのは大田大尉である。パイロットは大尉の思うがままに動いてくれている。
 「何か いい方法は無いものか、」今まで人を殺したことがないのに、ここに来て自爆するのは、パイロットと乗員を殺すことになる。自分達は もう死んでいるので好いのだが、と大田大尉は呟いた。
 「なんて優しい人なのだろう、こいつ等が広島に原爆を落としたっていうのに」と河部曹長は思い、銃座にいた米国兵の脳みそをいじくり始めた。
 第509爆撃隊所属のB29の、巨大なアルミ合金の翼が、不気味に震えていた。

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 暫くして、
 「そうか、その手が有ったのか、」と 大尉は膝を叩き 皆に言った。「有明の漁民には申し訳がないが、干潟に着水するぞっ、」行きついた所が硬い干潟であれば、乗員も助かる。零式戦闘機の滑走路では、この機は止まらん。「これ以上の知恵があろうか」
 島原半島が見えてきた。余分な燃料を全て捨てさせ、窓に二本の日の丸を掲げさせた。その日の丸は米国兵が記念に持っていたものだった。「武運長久」と書かれてあった。そして無事着水と言おうか、グライダーのように干潟に着陸した。

a0144027_1571767.jpg 後続の原爆観測機には、零式戦闘機が果敢な体当たり攻撃を仕掛けていた。こちらには、桜井徳太郎陸軍少将が率いる、第二百十二師団の日本軍が 我先にと向かって来ている。放心状態の米国兵と、ムツゴロウを後にして、大田大尉ら部隊は、またしても ガダルカナル島に行くのである。「よか、敗戦まで ここにおっとしようか」と中佐が言った所にである。

 ガダルカナル島に戻った 大尉ほか死霊部隊は、さっそく戦果を報告するべく 阿南中佐の所へ向かうのだが、

 「あれっ」
 何か様子が違うのだ。
 あの洞穴が無いのである。
 「そんなばかな」

 そういえば あの米軍の飛行場も無傷であったようだし、藪の中に隠していた装甲車も見当たらない。まるで狐につつまれたようである。
 ふと 目を下ろした時、古ぼけた手帳が落ちていた。一陣の風が吹き、はらはらとページがめくれ、それは、あの 阿南中佐が軍刀を抜き、万歳攻撃で散っていった最後の日付けと、妻子への熱い想いが書かれていた。

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 「何と あの頃か」 と、
 自分が餓死寸前だった頃のことを思い起こした。彼の人達も幽霊だったのか、そして我々を使って二発目の閃光を阻止させたのか。
 セピア色に色落ちした、浦上天主堂の前に立つ 妻子の写真が、ひらひらと舞った。











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by hirosi754 | 2010-06-02 16:52 | 小説 | Comments(0)